top of page

​question  & answer ~質問箱~ ​職場のこんな時どうするの?への回答をまとめています。

01/ 整理解雇

01-01 人員削減の必要性

​01-02 希望退職の募集(解雇回避の努力)

01-03 人選の合理性

01-04 手続きの妥当性

02/ 普通解雇

02-01 就業規則における解雇事由の定め方

02-02 解雇予告手当をめぐる問題

02-03 普通解雇事由の事後的追加主張

​​02-03(補足)退職証明書

02-04 傷病を理由とする解雇

02-05 能力不足を理由とする解雇(原則)

02-06 同(高度人材としての採用時)

02-07 勤務不良による解雇

02-08 協調性不足を理由とする解雇

​02-09 変更解約の告知

03/ 懲戒解雇

03-01 懲戒手続きについて

03-02 懲戒解雇と退職金

03-03 不正行為(業務上横領)を理由とする解雇

03-04 インターネットの利用等を理由とする解雇

03-05 セクハラ・パワハラ

03-06 私生活上の非行を理由とする解雇

03-07 配転命令違反を理由とする解雇

03-08 経歴詐称を理由とする解雇

03-09 兼業を理由とする解雇

03-10 内部告発を理由とする解雇

03-11 懲戒解雇から普通解雇への転換

​03-12 懲戒解雇事由の事後的追加主張

03-13 懲戒解雇事由に基づく普通解雇

​03-14 予備的普通解雇

04/ 休職と解雇

04-01 休職命令の可否と手続

04-02 復職の可否の判断

04-03 復職前の試し出勤

04-04 復職後のリハビリ勤務

​04-05 休職と復職を繰返す従業員への対応

  •  01-01 整理解雇を検討しています。4要素の一つである人員削減の必要性を検討するにあたり留意すべき点はありますか?
     人員削減の必要性の程度に関しては、企業の合理的運営上やむを得ない必要があれば足りると考えられています。レブロン事件決定でも、整理解雇の有効要件の一つである人員削減の必要性とは、人員削減を行わなければ直ちに企業の倒産が必至であるという差し迫った状況にあることを要求するものとまで解することは困難であり、人員削減は企業の合理的運営上やむを得ない必要があれば足りると判示されています。  さらに、上記必要性の程度に関しては、余剰人員を整理して採算性の向上を図る場合でも、企業経営上の合理性が認められれば人員整理の必要性が認められるとする裁判例があります。例えばナショナル・ウエストミンスター銀行事件決定では、「更に将来においても経営危機に陥ることが予測されていない企業が単に余剰人員を整理して採算性の向上を図るというだけであっても、企業経営上の観点からそのことに合理性があると認められるのあれば、余剰人員の削減の経営上の必要性を肯定することができる」判示しています。  このため、事業再建(改善)計画を綿密に策定し、実行することが重要となります。なぜなら、取締役会で議論を尽くすとともに、適宜、外部の専門家の意見を取り入れながら、事業再建計画を綿密に構築したならば、これに対して裁判所が合理的な経営な判断ではないとすることは例外的だと考えられるからです。  次に、事業再建計画を構築するにあたっては、事業方針に基づき組織体制の効率化・最適化の観点から、削減すべき人員数を決めることになります。  こうした事業再建計画やこれに基づく削減人員数は、手続きの妥当性の観点から、労働組合や従業員に対して説得的に説明できるように準備しておく必要もあります。
  • 01-01(補足)また、整理解雇と同時期に、今後の経営戦略の観点から、新規採用をすることは可能でしょうか。
     これは、「人員削減の必要性と新規採用は矛盾するのか」ということが争点です。 整理解雇と同時期に新規採用をする場合があります。この場合、一方で人員削減の必要性があるとして整理解雇をしながら、他方では新規採用をしていますので、人員削減の必要性がなかったのではないかという点が問われる余地があります。  人員削減措置の決定後に、多数の新規採用や大幅な賃上げを行う等、明瞭に矛盾した経営行動がとられた場合は、人員削減の必要性が否定されることがあります。(参考判例:オクト事件、ホクエツ福井事件)  ただ、綿密な検討を経て事業再建計画を作成するにあたり、組織体制の効率化・最適化を目指す中での新規採用が一律に否定されるとは考え難く、当該事業再建計画が合理的な経営判断であると外部からも適切に理解されるものであれば、認めれらる余地は十分にあると言えます。  ですが、実際の実務では、整理解雇と同時期の新規採用は、人員削減を否定する要素のひとつとなり得ますので、慎重にならざるを得ないと思います。一般的には、特に能力が高い、専門性が高い従業員など、明確に合理性を説明できる場合に限定して新規採用をし、その他の従業員については一定期間を置いてから採用を検討すべきでしょう。
  • 01-02 整理解雇も視野に入れて、希望退職を募集したいのですが、どのように実施すればよいでしょうか。
    (解雇回避努力としての希望退職の募集) 希望退職の募集は、必須の要件ではありません。何故なら、希望退職の募集を行うことによって優秀な人材が他に流出する危険性があるからです。ですが、一般的には直ちに退職勧奨を実施するのではなく、希望退職を実施することが多いでしょう。これは、希望退職の募集を実施したほうが解雇回避努力義務を尽くしているとの判断を受けやすいという点に加えて、レピュテーションリスクの観点から穏健な方策を取りたい、退職勧奨による緊張状態から紛争に発展する危険性を極力減らしたいといった企業側の要望もあるからです。 (募集条件の決定) ・削減(募集)人数決定、対象者の確定 削減人数の決定については、仮に整理解雇に至って裁判となった場合でも、決定当時の根拠資料に基づき、削減人数を合理的に説明できれば足りるものと考えられます。具体的には、そうした人数は会社の適時判断によるものとなりますので、実際に募集する際には「●名」と確定的に表示するのではなく、「●名程度」と曖昧さを残すのが妥当です。 次に、希望退職者の募集対象について、全従業員を対象とするのか、一定の条件を付すのか(例えば、期間雇用やパートのみを対象とするのか、一定の部署、一定の事業所を対象とするのか、年齢で区切るのかなど。)を決定することになります。 ・募集期間(期間延長、第二次募集)、退職日を設定する 募集期間については、2週間から1か月程度の期間を設けることとなります。ただ、応募者の人数が足りない時には二次募集を行う場合や募集期間を延長する場合もありますので(延長等をするか否かは当初の段階で決めておくべき事項です)、このような措置をとる場合は、当初の募集期間が短くても問題ありません。 但し、募集期間を延長する等する場合に退職条件をさらに有利にしてはいけません。当初の応募者を裏切る結果となるからです。もしも仮に、有利にするのであれば、当初の応募者も同条件にする必要があります。しかしながら、後日、より有利な条件提示があるかもしれないとの期待を抱かせることになり、応募者が足りないからと言って条件を有利にすることは得策ではありません。 また、退職日に関しては、引継ぎ等の関係から、希望退職募集期間満了後、数週間から1ヶ月経過後とすることが多いですが、一定の日を決めつつも、業務上必要な場合には退職日が延長されることが有り得る旨を明示することもあります。 さらに、希望退職の退職日と、その後の退職勧奨による退職日、整理解雇日を異なる設定にする場合は、希望退職に応じた者が不利益にならないように注意が必要です。つまり、退職勧奨による退職日、整理解雇日が延びれば延びるほど、その間の給与を受け取れるという意味で希望退職に応じなかった者が有利になるのであり、希望退職者に出した条件(割増退職金)の意味も薄れるという関係にあることを認識すべきです。
  • 01-03 貢献度の低い者を整理解雇の対象としたいのですが、どのような基準を設定することが考えられますか。
    整理解雇の有効性を満たすための4要素のうち、①人員削減の必要性や、②解雇回避の努力が認められる場合であっても、解雇対象者の③人選の合理性がなければ整理解雇は有効とはなりません。そして、人選の基準としては、①会社への貢献度、②解雇により労働者が受ける経済的打撃の程度による基準、③その他の基準がありますが、いずれの基準を採用するにしても、客観的・合理的であること、さらには具体的であることが求められ、また実際の基準適用は公正に行う必要があります。 では、客観的で合理的な人選基準とはどのようなものをいうのでしょうか。 ひとつに、恣意的なものや抽象的なものであってはならないことが挙げられます。例えば裁判例では 「業務に秀でた者、能力のある者」という人選基準について「抽象的で評価的な要素が多く、客観的な選定基準とはいい難く、本件選別基準に、選別者の恣意的な人選を防止するというような機能は期待できない」(日証 第一・第二解雇事件)としたのものや、「適格性の有無」という人選基準について「極めて抽象的であるから、これのみでは評価者の主観に左右され客観性を担保できないだけでなく、場合によっては恣意的な選定が行われるおそれがある。このような基準を適用する場合、評価の対象期間、項目、方法などの具体的な運用基準を設定したうえで、できるだけ客観的に評価すべきである」(労働大学 本訴事件)とするものがあります。このように、抽象的な基準はできるだけ避けるべきですし、一定程度抽象化された基準を設定せざるを得ない場合でも、恣意を許さないよう判断基準の具体化を行い、公正に適用することがポイントです。
  • 01-04 整理解雇を進めようとするときに、労働組合がある場合とない場合では、どのように手続きをすすめるべきでしょうか。
    整理解雇の有効性を満たす4要素のうち、手続きの妥当性とは、整理解雇をするにあたり、会社の状況(人員削減の必要性)、経緯(解雇回避努力)、人選基準等や解雇の時期・規模について従業員・労働組合に十分な説明をし、協議をすることをいいます。 この点、労働協約や就業規則に、希望退職募集、退職勧奨、整理解雇等について労働組合との協議条項がある場合は、必ずそれを履践する必要があります。もし、そういった協議条項がない場合でも、労働組合(執行部)に対し、十分な説明をし、協議を行う必要があるでしょう。 また、労働組合がない場合は、直接に労働者に対し説明会をなどを通じて説明をする必要があります。判例には「労働組合又は労働者に対し、整理解雇の必要性とその時期・規模・方法につき、納得を得るための説明を行い、誠意をもって協議すべき義務を尽くしたこと」が必要だとしたうえで、「債務者では人員整理を行うことが必要な状況にあり、いずれ人員整理が行われる可能性があることを主任以上の管理職に対して説明しているとしても、直接に解雇の対象となる可能性が高い非管理職の従業員(ないしその代表者)との間では右に関する協議の機会を設けたことは一度もなかったことが一応認められる」などとして、手続きの合理性を欠いているため、解雇は無効であるとあります。(北原ウェルテック事件)したがって、すべての労働者を対象とした従業員説明会などを実施して、説明を尽くすとともに、それを記録に残すことが大切です。
  • 02-01 就業規則で普通解雇事由を定めるにあたって、どのようなことに注意したら良いですか。
    労基法89条3号(第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。) 三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。) 三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項  と定められていますので、就業規則には解雇事由を必ず記載する必要があります。 そして、その解雇事由に該当しなくても解雇が出来る場合があるとする考え方(例示列挙)と解雇事由に該当しない限り解雇は出来ないとする考え方(限定列挙)のふたつの考え方が並行しており、解釈は確立していません。ですので、基本的な解雇事由に加えて企業実態に合った解雇事由を定めることができるのがベストです。 また、定めた解雇事由に直接当てはまらない場合でもそれに準ずる程度の合理的な理由が存するときには解雇することが可能となるよう、「その他前各号に準じるやむを得ない事由のある場合」などのいわゆる包括条項を定めておくことが重要です。
  • 02-02 解雇予告手当を支払って解雇する場合、どのような点に注意する必要がありますか?
    労基法には、解雇予告について次のように定めています。 「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、①天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は②労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。  2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。  3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。  つまり、30日以上前に解雇予告が出来なかった場合や1項但書の場合にように即時解雇を要する場合には、30日分以上の解雇予告手当もしくは、30日に満たない分の手当を支払うことで、解雇を可能にするというものです。 ですので、その算定を法律通りに正しく計算し、解雇日までに支払うことが大切です。 なお、次の者を解雇する場合は、解雇予告の義務がありません。  ・日雇いの者  ・2ヶ月以内の期間を定めて雇用した者  (2ヶ月を超えて引き続き使用した場合を除く)  ・季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて雇用した者  (4ヶ月を超えて引き続き使用した場合を除く)  ・試用期間中の者(14日を超えて引き続き使用した場合を除く) また、1項但書の②の場合において、法20条の保護に値しない程度に悪質であって、予告をさせることがその事由と比較して均衡を失するようなものについては、解雇予告除外認定を得られる場合もあるので要検討です。
  • 02-03 無断欠勤を理由に従業員を解雇したところ、解雇の効力を争ってきました。従前から遅刻や欠勤を繰り返していたことや、協調性に欠けることを、後から普通解雇事由として主張することは出来ますか。
    使用者が従業員を解雇する場合、就業規則の解雇事由のひとつだけではなく、複数の事由に該当するケースがほどんどだと思います。そうした場合、最も明確で客観的な裏付けのある解雇事由をのみを、その解雇事由に挙げることも多いでしょう。 しかし、後になって設問のように解雇の効力が争われた場合、他の事由も追加して主張することができるのでしょうか。 結論から言うと、可能です。 先にあげた解雇事由に該当する他の事実を後から追加して主張することは可能です。 設問の場合では、無断欠勤をしたことを理由に、例えば普通解雇事由のひとつである就業規則の「勤務状況が不良で従業員としての職責を果たせないと認められたとき(勤務状況不良)」に該当することから解雇にしています。この場合、以前からの遅刻や欠勤を繰り返しており、会社から注意を受けていたことも勤務状況不良の新しい根拠として追加で主張できるということです。 また、解雇通知に記載した普通解雇事由とは異なる解雇事由を新たに主張することも可能です。 設問の勤務状況不良を解雇事由にして通知を行っていても、その従業員が職場の同僚に対し攻撃的であったり、上司に対して反抗的であったりした場合には、「協調性を欠き、他の従業員の業務遂行を妨げているとき」に該当するとして、主張することもできます。また、解雇時に存在していた事実ならば、当時認識していなかった事実でも、同様に主張することが可能です。 ただし、懲戒解雇の場合には、普通解雇と異なり解雇事由の追加主張には制限がありますので注意が必要です。
  • 02-03(補足) 退職証明書の発行について教えてください。
    会社は、従業員から請求があった場合には、退職事由等を記載した退職証明書を交付する義務があります。(労基法22条1項)解雇をした場合には、解雇予告の日から解雇日までの間に請求があった時には、解雇理由証明書を交付することになります。 こうした証明書は、当該従業員にとり解雇の事実に関する重要な判断材料であることから、これに記載した解雇事由と異なる事由の主張を認めると証明書の意義がなくなるから追加主張は認められないとする考え方もあります。 仮に認められないとまで厳しく解釈しないとしても、これらの証明書に記載しなかったということは、会社が解雇事由として重視していなかったからとする判断もあり得ます。 したがって、退職証明書に解雇の理由を記載するときには、書きやすい理由のみを記載するのではなく、根拠事実が存在する理由について書き落としのないように注意することが必要です。 なお、この退職証明書や解雇理由証明書には、従業員が請求しない事項については記入してはならないとされています。(労基法22条3項)ただ、これは、使用期間や退職の理由といった各事項について、これらの証明書に記載するか否かを従業員が決定できるというだけであり、会社が記載を記載を決定された事項についてどんな内容を書くのかまでは限定できません。ですので、会社が退職の理由について懲戒解雇という見解を有しており、従業員は自己都合退職であるという見解を有していた場合に、当該従業員が証明書に退職の理由を記載する選択をした場合には、会社側は自らの見解に立って懲戒解雇との記載を行えば足ります。具体的な書式に関しては、厚生労働省の様式集や最寄りの労働局HPの様式をご参照ください。
  • 02-04 従業員が病気のため、本業の業務をこなすことができません。病気を理由として解雇することはできますか。
    当該従業員の傷病が業務上に依るものの場合、その療養中およびその後30日間は解雇することはできません。(労基法19条1項)ただし、療養開始後3年を経過しても治癒せず、会社が法令の定める打切補償(同法81条)を支払う場合は、解雇が可能となります。(同法19条但書)従業員が3年を経過した日に労災保険の傷病補償年金を受けているとき、または受けることになった時には、打切補償が支払われたものとみなされ、解雇が可能です。 ただ、業務上の傷病に関して療養は終わったが、後遺症などが残り、業務に復帰することができない場合には、この解雇禁止は適用されずに、私傷病等のケースと同様の取り扱いをすることになります。 では、従業員が私傷病により本来会社の要求する労務の提供が出来なくなったときはどうすればいいのでしょうか。 従業員のもっとも基本的な義務は、雇用契約の本来の目的に適合した労務の提供です。ですので、その義務が果たせないことは、解雇の理由となります。就業規則の普通解雇事由のひとつである「精神又は身体の障害により、業務に耐えられないと認められたとき」に該当することになります。 しかしながら、どの程度業務の遂行ができれば、雇用契約の目的に適合した労務の提供と言えるのかは、判断が難しい所です。こうした判断については従業員の主治医の診断書や産業医の意見など、客観的な根拠に基づき判断する必要があるでしょう。 なお、就業規則に休職制度を設けている場合は、解雇を考える前にまず休職の適用を検討することになりますので注意してください。 次に、雇用契約上に職種や業務内容について限定がない場合を検討します。 職場復帰した従業員が本来の業務を十分に遂行できないとしても、雇用契約上、職種や業務内容の限定がなされていない場合は、債務の本旨に従った履行の提供がないとただちに判断すべきではなく、他の業務への配置転換等の可能性がないかを検討する必要があります。その際には、①従業員の能力・経験・地位、②会社の規模、③会社における従業員の配置・異動の実情や難易度、等を考慮しながら検討することになります。 反対に、職種や業務内容に限定があった場合はどうでしょうか。 この場合は、会社の目的とする労務の提供が明確になっていますので、その履行ができない場合について、他の業務への配置転換等を検討すべき義務はありません。ですが、実際には配置可能な他の業務があり、会社としてその業務を担当させることにそれほどの問題もないのなら、会社として任意に検討することはもちろん妨げられません。その場合は、本人との合意に基づき職種や業務内容を変更することになります。 以下、フロー図です。
  • 02-05 単純なミスを繰返し、何度注意しても改まらない従業員がいます、能力不足を理由として解雇することはできますか。
    業務の遂行に必要な能力を”著しく”欠き、職務に適さないことは、就業規則の定める「勤務成績または業務効率が不良で就業に適さないと認められたとき」などの解雇事由に基づきますので、解雇の事由となります。 しかしながら、新卒の場合や、中途採用でも「経験不問」の募集の場合は、従業員が即戦力としての能力を発揮することを期待されておらず、むしろ会社が一定期間をかけて、従業員の能力が延びるように適切な指導や支援を行うことがいていされていると考えられるため、このようなケースの場合、能力不足を理由に解雇することは、相当にハードルが高いといえるでしょう。 単純に、勤務成績が芳しくないというだけでは足りず、能力不足が著しい程度に達している必要があります。例えば、人事考課で平均を下回る評価を継続的に受けていても、それだけでは解雇の事由にはなりません。(森下仁丹事件) ミスが繰り返しなされるという場合、単純な不注意によるミスが多いというだけで解雇したいということはほとんどないかと思います。大抵は、当該従業員に「自分のやり方にこだわる」「指示に素直に従わない」「コミュニケーション不足」等の一連のミスにつながる性格や傾向が存在することが多いでしょう。こうした性格や傾向は、向上の見込みの可否にも影響してくることですので、能力不足の要素として考慮していくことになります。 さて、会社の求めるレベルまで達していない、明らかに能力不足とみられる従業員に対しても、会社としては、指導や教育を行い、向上の機会を与えることが求められます。そのような機会を与えてもなおかつ、改善が見られず、今後必要とされるレベルに達することが見込めないと判断された時にはじめて解雇が可能となります。 ですので、会社としては、当該従業員に対し、どのように指導・教育を行ったかを記録に残すことが重要ですし、指導と教育に対し、当該従業員自身の評価や感想なども内容と一緒に記録しておくことが望ましいといえます。 また、職種や職場環境を変えることによって、個人の能力を発揮できる場合もあります。解雇の効力が争われた場合、こうした配置転換を試み、複数の上司のもとで繰り返しチャンスを与えられたにもかかわらず問題の改善がみられなかったとなれば、解雇の有効性が認められる可能性が高まります。会社規模から、そうした配置転換等が可能な場合は、必ず検討すべきといえるでしょう。
  • 02-06 営業職の幹部として好待遇で中途採用したのに、一向に成績が上がらない従業員がいます。能力不足を理由として解雇することはできますか。
    即戦力を期待して、管理職・営業職・専門職など、景観や専門的能力を有するものを相応の条件で中途採用した場合は、職務に要求される能力が高い為、期待していた水準に達しない時には、解雇が認められやすいといえます。 もっとも、そうした場合でも、当該従業員にとり、新たな職場環境となれない業務であることには変わりない為、改善の機会を与えることは必要です。 改善に必要な時間はもちろん、個別の状況に応じ、指導や支援を行うことが求められる場合もあります。 こうした高度人材の採用の際には、採用時において、雇用契約上の地位及び職務内容を特定することに加えて、どのような能力や業績を要求しているかを具体的に記載することが可能であれば明記しておくことが望ましいといえます。契約時にそうした能力等が契約内容になっていること、または、少なくともそれが期待されていることを当該従業員に説明することにより、争いが起きた場合に、あらかじめ従業員も認識していたことであると主張することができます。 これまでの勤務歴や経験を評価し営業部長、経理部長などの地位を特定して高い給与で採用する、いわゆる地位特定社員の場合において、期待された成績が上がらず、または能力を有していないことが判明したときは、解雇できると考えます。 もっとも、入社してすぐに結果を出すことを期待するとこは無理がありますので、特段の事情がない限り、少なくとも半年から1年程度は様子を見る必要があるでしょう。 会社として、求める業績の内容を従業員に認識してもらい、その上で必要であれば指導・支援を行い、改善の期間を与える必要があるのです。それでも業績が期待の水準に達しない時には、解雇することができます。
  • 02-07 頻繁に欠勤する従業員がいます。急に休むので業務に支障を来しています。解雇することはできますか。
    従業員が頻繁に欠勤や遅刻・早退などを繰返し、その程度が著しい場合は、解雇の事由となり得ます。具体的には就業規則の「勤務状況が不良で従業員としての職責を果たせないと認められたとき」などの解雇事由に該当することになります。 それでは、解雇事由に該当する程度であると判断するためにはどのような事情(事実)を考慮すべきでしょうか。以下の要素が考えられます。  (従業員の属性)   ↓  ① 雇用契約上の地位に照らした職責   ↓  ② 期待する業績   ↓  (従業員の行為態様)← ← ← ← ← ← ← ← (会社の管理)   ↓  ① 欠勤・遅刻・早退の長さや回数、頻度      ① 日常管理の厳格さ   ↓  ② 正当な理由によるものか            ② 注意の回数・頻度   ↓  ③ 所定の手続きに従ったものか  (業務への影響)      ① 業務上の支障が生じているか      ② 周囲の負担は過大か 連続して5日を超えるような長期の欠勤を繰返している場合、労務の提供という従業員の基本的な義務を十分に履行できていないことから、解雇事由に該当すると認められやすいといえます。ただし、そのことだけで直ちに勤怠不良であると判断することはできません。欠勤の理由がケガや病気である場合には、私傷病に基づく解雇を検討する必要があります。(本QA:02-04) 通常は、長期の欠勤に加えて遅刻や早退、就業中の勤務態度なども考慮して、解雇事由に該当するかどうかを検討していくこととなります。 一方、短期の欠勤や遅刻・早退を繰り返す場合、正当な理由があり、一定程度である場合は会社としても許容せざるを得ないでしょう。但し、相当の頻度に達しており、繰り返し注意を受けたにもかかわらず改善が見られない、正当な理由が認められない、業務に具体的な支障が来しているなどの事情が生じた場合は、解雇相当であると考えます。
  • 02-08 能力はあるのですが、上手くチームプレイができない従業員がいます。協調性に欠けることを理由として解雇することはできますか。
    個人として能力が高くても、会社という組織においては、いたずらに秩序を乱すことなく上司や同僚などの周囲との円滑な関係を保てなくては組織の一員としての力を発揮することはできません。個人プレーが目立ち、上司に反抗的であったり、同僚との協力関係が築けないなど、起業秩序や組織の業務体制において無視できない影響を及ぼしているような場合、解雇の事由になり得ます。 就業規則に「協調性に欠き、他の従業員の業務遂行を妨げているとき」など協調性の欠如について具体的に言及する解雇事由を定めている場合は勿論ですが、そのような事由を定めていない場合であっても、勤務態度の不良や、その他やむを得ない事由などのいわゆる包括条項に該当するとして解雇できる可能性があります。 協調性の欠如に基づく解雇が認められるためには、業務の遂行に支障が生じており企業秩序が乱されている事情が必要です。単に人間関係が良好でない、職場において孤立している等では不十分です。以下のような事情が認められる場合は、解雇事由に該当する可能性がありますので検討が必要です。  ・上司に対し反抗的な態度をとり、業務上の指示にも従わない。  ・暴言を吐くなど感情的な対応をする  ・自己のやり方に固執し、所定の手順を守らない  ・必要な報告・連絡・相談を怠り、勝手な判断で業務を進める  ・これら行動により、業務上の混乱を生じさせ、周囲に負担をかける どの解雇事由でもそうですが、直ちに解雇とすべきではありません。会社として当該従業員に対し、注意と指導を適切に行い、改善の機会を与えなければなりません。命令違反や規律違反に該当する場合には、懲戒解雇に付するべきでしょう。 繰り返し注意を行ったにもかかわらず、改善が見られずかえって反抗的な態度に出るような場合には、解雇はやむなしと判断されます。 もうひとつ、協調性に欠ける原因が本人の資質や態度のみにあるとは限らないことに注意が必要です。周囲は本人に対し、一度もってしまったマイナスの感情をかえることは容易ではありませんし、そういった周囲に対して協調性を持てというのも酷な話です。ですので、会社として配転の余地があるのであれば必ず検討する必要があるといえるでしょう。複数回配転を行っても協調性に欠けるという結論が出るのであれ、本人の帰責として解雇も相当となり得るでしょう。
  • 03-01 就業規則に懲戒の手続きを定めていません。従業員を懲戒解雇するにあたり必要な手続きを教えてください。
    会社が懲戒権を行使する際には、以下の原則に則り行う必要があります。 ① 明確性の原則…懲戒の事由及び種別(程度)が就業規則上に明確に規定されていることが必要です。 ② 遡及処罰の禁止…根拠規定が定められる以前の行為について懲戒の対象とすることはできません。 ③ 一事不再理…同一の行為について二重に懲戒の対象とすることはできません。もっとも、非違行為を繰り返した場合に過去の懲戒歴を情状で勘案することは可能です。 ④ 比例原則…非違行為の種類、程度その他の事情に応じて処分の程度は相当なものである必要があります。 ⑤ 平等原則…他の懲戒事例(先例)と比較して平等に取り扱われている必要があります。 ⑥ 適正手続き…弁明の機会の付与が必要です。 そして、以下のような流れに沿って手続きを行うことになります。 ① 非違行為の存否についての事実調査 → 証拠等に対するアクセス制限 ↓                    必要に応じて自宅待機命令の発令   ★事実調査において最も重要なことは関係証拠に対する関係者のアクセスを直ちに禁止して証拠の保全を図ることです。特に客観的証拠(伝票・領収書・メール等)を直ちに収集・確保する必要があります。  ★客観証拠の収集と関係者へのヒアリングができた段階で懲戒対象者へのヒアリングを実施します。収集した証拠と照らし合わせながら非違事実を明確にして詳細に確認する必要があります。重要な事案や争いがある場合などは弁護士等の専門家の協力を得た方が良い場合もあります。  ★非違行為が発覚した場合、調査対象者には事実関係が明確になるまで業務に従事させることが適当でないことが多く、職場への影響も小さくはないことから処分が決定されるまでは、当該従業員に対し自宅待機を命ずることが多く行われます。こうした場合、就業規則に自宅待機命令に関する規定が無くても使用者は業務命令として自宅待機を命ずることができます。自宅待機中の賃金は原則として支払う必要がありますが、緊急かつ合理的な理由があれば、賃金の支払いを免れる場合も考えられます。(日通名古屋製鉄作業事件) ② 弁明の機会の付与 → 就業規則上の手続き(労使間協議等)の実施 ↓  ★懲戒処分は施歳罰としての性質を有していますので、特に適正な手続きを経ることが要請されます。修行規則や労働協約に定める手続き(懲罰委員会の開催など)を履践するとともに、なんら手続きに関する規定がない場合であっても、本人に弁明の機会を与えることが必要となります。弁明の機会を与えない懲戒処分は手続き的に相当性を欠き懲戒権の濫用となりますので注意が必要です。  ★弁明の機会を付与する際には、当該従業員が釈明の為に検討する時間を与え、実施する場所や方法についても、心理的圧迫を与えない配慮が必要となりますので、人選等について客観的に適正であり公平性を保てているか等に注意しながら、弁明の機会を与えたことが証拠上明確になるように書面をもって弁明の機会を与えることが望ましいといえます。  ③ 懲罰委員会等で事実の認定、処分の決定 ↓ ④ 労働基準監督署長の除外認定  ★従業員を即時解雇する場合、通常は、解雇予告手当の支払いが必要となりますが、労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合は、予告や解雇予告手当の支払いが不要になります。(労基法20条1項但書)もっとも、そのためには、労働基準監督署長の除外認定を受ける必要があります。(同条3項・19条2項) ↓ ⑤ 懲戒解雇通知による意思表示の到達  ★ 適正な手続きを経て、懲戒解雇が相当であるとの判断に至った場合には、当該従業員に対し、懲戒解雇通知書により懲戒解雇の意思表示をすることになります。意思表示は本人に到達して初めて効力が生じます。到達した事実を証するため、会社において懲戒解雇通知書を交付する場合は、受領のサインをもらう、自宅待機中の場合は懲戒解雇通知書を内容証明郵便で送付する等の方法を取ることが望ましいでしょう。もし、当該従業員が内容証明郵便の受取りを拒否する場合は、相手方の郵便受箱への配達が記録される特定記録郵便の利用も検討すべきです。
  • 03-02 集魚規則上、懲戒解雇者に対し退職金を全額支払わない規定にしています。全額支給しないことにつき問題はありませんか。
    就業規則や退職金規程において、懲戒解雇がなされた場合は退職金を全部不支給とする条項が定められていることがありますが、このような退職金不支給条項は有効だと解されています。退職金の功労報償的な性格に鑑み、退職金不支給条項は労基法24条(賃金の全額払い)、民法90条(公序良俗)に違反せず、有効であるとしています。 もっとも、退職金不支給条項に該当する事実があったとしても常に全額の不支給が認められるわけではなく、当該条項が適用できるのは、従業員のそれまでの勤続の功を抹消するほどの”著しい背信行為”があった場合に限られます。 著しい背信行為とは、具体的に不正行為により、会社に多大な経済的な損害を与えたような場合や、職務上の地位を濫用して取引先から多額の金銭等を収受した場合、重大な刑事事件を犯し、職場・取引先に少なからぬ影響を与えた場合、会社の重要な機密情報を競合会社に漏洩した場合などが挙げられます。 ですので、懲戒解雇にあたるからといって一律に退職金を全額不支給とすることはできません。懲戒解雇事由に該当する行為を個別具体的に検討し退職金の不支給の可否を判断する必要があるのです。 では、退職金の一部不支給の場合には、どのように退職金の支給割合を決定すべきでしょうか。考慮の重要な要素として以下の4つが挙げられます。  ① 懲戒解雇事由の内容と程度  ② 使用者の被る損害の性質と程度  ③ 懲戒解雇の一般的な情状(直接の懲戒解雇事由とされなかった非違行為の存在等)  ④ 従業員に有利な事情(勤続年数の長さ・職務内容の重要性・給与額の相対的な低さ・過去の功績の存在・内容等) 会社は、上記の4点を検討し、過去の類似の判例等を参考に支給割合を決定していくことになります。
  • 03-03 わずかな金額の業務上横領を行った従業員を懲戒解雇にすることはできますか。従業員に対する損害賠償請求も検討しています。どのような点に注意が必要ですか。
    判例では、金銭を扱う立場の者による金銭着服行為に関しては特に厳しい判断がなされています。例えば信用金庫の職員が集金した金員の一部(1万円)を着服・横領した事案において、信用に立脚する金融機関の性格上、懲戒解雇はやむを得ないものとして有効とした例があります。(前橋信用金庫事件) ですので、金銭を取り扱う立場の者による金銭着服行為に関しては、その金額の多寡にかかわらず懲戒解雇となりえると言えます。 しかしながら、横領の故意が明確に認定できない場合には、横領の事実認定を前提とした懲戒解雇処分に付することはできませんし、金額が少額である場合や会社の金銭管理が杜撰な場合には、単なる事務処理上のミスであるとして、横領の故意まで認定できない可能性もある為、事実認定には慎重を期する必要があります。 事実調査について注意すべき点は、03-01のQAにおいて述べた通りですが、再度、不正行為に対する調査の留意点です。  不正行為発覚後、ただちに自宅待機命令を発して証拠の隠滅を防止し、証拠の保全を図ること。会社は、当該従業員と適宜連絡を取りながら逃亡を防止すること。  供述の任意性を確保した上で、事情聴取を迅速に実施すること。ICレコーダーでの録音等が望ましいでしょう。  不正行為の手口を確認した後は、再発防止策の検討を行うこと。 従業員の不正行為により被った会社の損害は、当該従業員に対し賠償を求めることができます。ただ、民事訴訟の提起は時間もコストもかかってしまうため、従業員が自認している場合には、会社と従業員との間で債務確認にの合意書を締結したり、強制執行ができるように債務弁済公正証書を作成したりすることが実務上多いかと思います。 不正行為による損害額が大きく分割弁済による場合などは、その弁済が滞った時に強制執行ができるように公正証書を作成しておくことが有効な手段といえます。こうした作成に係る費用については、本来ならば従業員の負担により行われるべきものですが、そうしたことが難しい場合でも、会社負担としてでも証書の作成を行うことが無難と言えるでしょう。
  • 03-04 従業員が個人のブログに上司・同僚に対する誹謗中傷を書き込んでいることが発覚しました。上司が注意しても改めるどころか暴言を吐くなどして上司の注意に従いません。当該従業員を懲戒解雇にすることはできますか。
    スマートフォンの普及により、SNSから個人が簡易に情報を発信できる環境があります。こうしたネット上の書込み等に関しては、通常、勤務時間外での活動であれば、原則として自由です。 もっとも、勤務時間外であっても従業員は、会社に対して秘密保持義務であったり、企業秩序を遵守する義務を負っていますので、書き込みの内容が、会社の秘密情報を含むものであったり、安易に特定できるような表記で会社評価や上司・同僚の名誉等を毀損するようなものである場合には、企業秩序遵守義務違反に該当する行為として、懲戒処分の対象とすることができます。 もし、勤務時間内に私的にインターネット上の書き込みを行っていることが発覚した場合、こうした行為は頻度や程度にもよりますが、従業員としての職務専念義務違反に該当しますし、企業施設を私用で利用したとして、企業秩序義務違反にも該当することになりますので、懲戒の対象とすることは可能でしょう。 ただ、実務的に懲戒解雇処分まで行うことが可能かと考えると、その書き込みの内容や私的利用の程度が著しく企業活動を妨げるものであったり、実質的な損害を発生させている場合等は、懲戒処分とすることに相当性が認められやすいといえますが、一般的なインターネットの私的利用という程度では、職務専念義務違反を理由として懲戒処分を行うことは難しい場合が多いと思われます。 ですので、まずこうした状況が発覚した場合、当該従業員に対し、企業秩序の回復に必要な業務上の指示や命令を適宜発令して、注意を重ねていくことが大切です。そして、注意を行った事実を記録に残すよう書面で発令する、メール等の場合はログを保存ずる等の工夫が必要です。また、ネット上への書き込み場合、問題となる書き込みの特定をした上で削除を求めるようにすることも重要です。 本問の場合は、個人のブログに上司・同僚の誹謗中傷が書き込まれており、上司の注意に対しても暴言を吐くなどの行為が存在しますので、企業秩序義務違反に該当し、繰り返し注意を受けても改善されない場合等は、懲戒処分も可能であると考えられます。
  • 03-05 社内通報窓口に女性従業員から上司からセクハラを受けたとの申立てがありました。どのような点に注意して調査を行うべきでしょうか。また、セクハラが事実だった場合、当該上司を懲戒解雇することはできますか。
    セクハラに対する使用者の義務として以下の指針が定められています。  ① セクハラの内容、セクハラがあってはならない旨の方針の明確化と周知・啓発  ② 行為者に対する厳正な対処方針、退所内容の文書による規定化と周知・啓発  ③ 相談窓口の設置  ④ 相談に対する適切な対応  ⑤ 事実関係の迅速かつ正確な確認  ⑥ 行為者・被害者双方に対する適切な措置  ⑦ 再発防止策の実施  ⑧ 相談者・被害者等のプライバシー保護のための措置の実施と周知  ⑨ 相談、協力等を理由とする不利益な取り扱いを行ってはならない旨の定めと    周知・啓発 (厚労省:平成18年厚労告615号) 事実関係の調査にあたり会社はまず、申告者に事実関係を確認し、被害が深刻な場合には双方の隔離を検討、緊急性等も考慮して暫定的な人事異動を行う等、適切措置をとる必要があります。(指針⑥)それと同時に、周囲に対し客観証拠の収集や聞き取り調査を進めたうえで、最終的に行為者とされる従業員に事情聴取を行うことになります。(指針⑤)この際、偏見を持たず取り組むことや公正な立場で事実認定を行うことがでいるよう専門家の同席を検討することも必要です。 また、こうした事実調査を行うことによって社内に被害の事実が広まってしまい、被害者や協力関係者等が二次的な被害を受けるリスクがありますので、情報管理を徹底し、被害者らのプライバシーに配慮する必要があることに注意してください。(指針⑧) 次に、セクハラに該当するかどうかの考え方ですが、セクハラには、強制わいせつと評価できる明らかなセクハラのほかに、① 役員・管理職が地位を利用して性交渉を要求・強要するケース、② 地位を利用して様々な性的言動(触る・抱きつく・性的に侮蔑的な言動を繰り返す)を行うケース、③ 言動は軽微だが本人の意思に反し、反復継続して行うケース、④ 性的言動に加えて、これを拒否した社員に対して上司の地位を利用して無視したり、仕事を外したり、性的風評を流布したりするケース(対価型+環境型)などがあります。様々なケースの中から会社は、双方の関係、程度や頻度、当該言動の場所や被害者の対応などを総合的にみて、当該言動が社会的見地から不相当される程度のものであるかどうかを個別の調査・検討することになります。 もし、セクハラであると認定できる場合には、懲戒解雇できる可能性は高まりますが、強制わいせつと評価できるほどに明らかである場合を除き、事案ごとに、当該従業員に対する従前の注意の有無や、行為の継続性や反省の程度などを考慮して慎重に懲戒解雇の有効性を判断する必要があります。もっとも、当該従業員に対し再三の注意にもかかわらず、反省の気配もなく、当該行為を長期間にわたり継続する等の悪質性が高い場合などは、強制わいせつに至らない態様のセクハラ事案であったとしても、懲戒処分を検討できる事案といえるでしょう。そこまで悪質と認められない事案の場合は、懲戒解雇処分は避け、減給等の解雇にいたらない懲戒処分を検討するか、普通解雇を検討することをおすすめします。
  • 03-06 飲酒運転や痴漢行為等の私生活上の非行により、従業員が逮捕された場合、懲戒解雇とすることはできますか。
    使用者は、従業員の私生活上の行為に介入することはできませんので、原則として私生活上の行為に対して懲戒処分を行うことはできません。 ただ、従業員の私生活上の非行が、事業活動に直接的に関連を有する場合や企業の社会的評価の毀損をもたらすような場合には、懲戒処分の対象となり得る場合があります。 例えば飲酒運転の場合、運送業等の事業を営む企業・団体に属する、いわゆる職業運転手が飲酒運転を行った場合には、当該従業員の適格性に大きな影響を与えることから、懲戒解雇が有効とされる可能性が高く、反対に運送業等の企業・団体でない場合には、懲戒解雇とできるかどうかは、その原因や動機、当該従業員の処分歴や反省の度合い、他の従業員に与える影響等、個別総合的に判断することになります。 痴漢行為に関しても、有名企業の従業員が逮捕される等のマスコミ報道がなされる場合がありますが、報道により過大になってしまった事案の大きさと、当該痴漢行為の悪質性が比例するものではないことに注意を向けなければなりません。 多くの場合、痴漢行為は、強制わいせつではなく、迷惑防止条例違反にとどまり、不起訴処分や略式起訴による罰金刑にとどまり、正式な公判請求に至りません。ですので、痴漢行為で逮捕された従業員が、公判請求に至らなかった場合には、当該従業員の前科前歴の有無(常習性)や、本人の反省の態度などの他の情状を考慮した上で、慎重に懲戒解雇処分の可否を検討することになるでしょう。
  • 03-07 従業員に対し配転命令を行ったところ、従業員がこれを拒否しました。当社は配転拒否を理由として懲戒解雇処分を行うことは可能でしょうか。
    配転とは、勤務地の変更を伴う「転勤」と、同一勤務内の所属部署の変更である「配置転換」とに区別されます。就業規則では、多くの場合「業務上の規則により、配置転換・転勤を命じることがある」といった配転命令に関する一般条項を設けていることでしょう。企業は、これに基づいて、配転命令を発令するわけですが、当該労働者との間に”職種限定”の合意があれば、一方的な命令によって職種に変更はできませんし、”勤務地限定”の合意があれば、一方的命令により転勤させることはできません。 他方で、配転に関する一般条項によって従業員に対する配転命令権が肯定されているからと言って、無制限に配転を行えるものではないことに注意が必要です。 判例上、配転命令は、① 業務上の必要性が認められないとき、② 業務上の必要性があっても、他の不当な動機や目的をもってなされたものであるとき、③ 労働者にとり通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合、には権利濫用にあたるとして、その配転命令は無効とされています。 では、適正な配転命令に対し拒否した従業員を懲戒解雇まで行うことは可能か、という点ですが、この判断においても注意が必要です。 配転命令自体は有効であったとしても、配転の利害得失に関し十分な説明を尽くしていない場合、労働者の合理的な決断をするための情報提供、必要な手順を尽くしていないとして、無効とされる恐れがあります。ですので、配転命令を拒否した従業員に対し懲戒解雇を行う場合には、以下の手順に注意し行う必要があるでしょう。  ① 配転命令は有効か。 NO → 懲戒解雇は無効。   YES       ↓       ② 配転命令に関し、労働者に対する十分な情報提供   ・協議を行ったか。                NO → 懲戒解雇は無効。   YES   ↓   懲戒解雇の余地あり。
  • 03-08 永年勤続していた従業員が職歴を詐称していたことが判明しました。経歴詐称を理由に懲戒解雇することはできますか。
    雇用関係は、労働者と使用者との相互の信頼関係を基盤とする継続的な契約関係であることから、使用者が雇用しようとする(雇用している)労働者に対して労働評価に直接関わる事項に加えて、企業秩序の維持に関する事項について必要かつ合理的な範囲内で申告を求めた場合には、労働者は信義則上、”真実”を告知すべき義務を負うと考えられています。 ということは、労働者が上記の義務に違反して、告知すべき真実を隠し、虚偽の申告をした場合には、経歴詐称に該当すると考えられます。 ただし、労働評価や企業秩序に関わる事項について必要であり合理的な範囲での告知義務ですので、労働者は自己に不利益な事項に関し、自発的な申告義務まで負うわけではありません。従って、企業側は採用時において企業が必要であり重要と考える事項に関し、労働者に対して申告を求めておくことがとても重要になってきます。 経歴詐称については様々な類型ごとに判例が蓄積されています。以下、そうした類型ごとの検討を紹介します。  ① 学歴の詐称 判例では、学歴を高く詐称した場合だけではなく、低く詐称した場合も懲戒解雇を有効としていますが、募集広告や採用面接等で学歴について十分に確認していなかったような場合には、学歴詐称を理由とする懲戒解雇は無効としています。ですので、学歴を重視する場合には、募集広告で学歴を明示した上で応募書類や採用面接等で学歴に関し、十分に確認しておく必要があります。  ② 職歴の詐称 職歴は労働食の評価につき決定的に重要な意味を持つため、職歴の詐称は重大な経歴詐称として懲戒解雇の事由となります。  ③ 犯罪歴の秘匿  犯罪歴の秘匿も経歴詐称に該当します。なお、すべての犯罪歴の秘匿が重大な経歴の詐称として懲戒解雇事由にあたるわけではなく、企業秩序を害するほどの影響があると思われる軽微でない犯罪であり、犯罪から期間が経過していないこと等の事情があることが必要と考えられています。  ➃ 年齢の詐称  年齢の詐称が企業の採用計画や企業秩序、労働力の評価に影響を及ぼす場合には、重大な経歴の詐称に該当し得ます。  ⑤ 病歴の詐称  病歴の詐称は、労働能力に影響する場合に限り経歴詐称に該当し得ます。  実務上では、採用前に健康診断を実施することが重要になりますが、通常業務では感染可能性の低い感染症(HIV感染、B型・C型肝炎等)の情報を取得することは、個人のプライバシーの侵害となる可能性があるため、業務上特に必要と認められる場合以外は取得すべきではないでしょう。  採用時にはわからなかった経歴の詐称が、従業員が長期間勤務した後に判明した場合は、もはや業務遂行に支障がないように思われることから、採用時の経歴詐称を理由に懲戒解雇をすることが可能かどうかが問われます。 この点、判例では、経歴の詐称による信頼関係の破綻や企業秩序の破壊は存続していると考えられ、勤務期間が長期間継続したことが懲戒解雇の可否に大きな影響を与えることはないと考えられています。ただし、経歴詐称を知りながら、長期間特段の措置を取らずに企業側が放置していた場合には、懲戒解雇は無効であるとされる場合もあるでしょう。なお、経歴詐称が判明してから一定期間が経過してからの懲戒解雇であっても、その期間の間に、退職勧奨の措置をとっていたりする場合は、経歴詐称を容認し不問に付する趣旨での雇用継続ではないとして、解雇が有効となった例もあります。
  • 03-09 従業員が当社に無断で休日に他社で働いていることが判明しました。当社は兼業を理由に当該従業員を懲戒解雇することができますか。
    厚生労働省では、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日 働き方改革実現会議決定) を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図っていますので、就業規則などにおいても、兼業や副業の取り扱いについて様々な工夫をされておられることと思います。 まず、兼業を理由に懲戒解雇を行う場合、就業規則の懲戒事由に兼業禁止を定めている必要があります。または、兼業を認めるにとしても会社側が許可した兼業のみとする許可制など、制限があることが必要でしょう。 判例では、労働者がその自由な時間を精神的肉体的疲労回復のために適度な休養に用いることは、次の労働日における誠実な労務提供のために必要な基礎的条件をなすものであり、兼業の内容によっては企業の経営秩序を害し、または企業の対外的信用、対面が傷つけられる場合もあるため、その限度で就業規則による兼業の禁止規定も合理的であるとしています。 ということは、従業員の行った兼業が、企業に対する労務提供に格別の支障を生じさせる態様や職場秩序に影響を与える態様であった場合に、懲戒処分の対象になると考えられます。 では、無許可の兼業が発覚した場合、直ちに懲戒解雇とすることは可能かという問題になります。 この点、判例では、当該兼業により労務提供に対する支障が大きい場合には、懲戒解雇を認める余地があると考えられています。そのためには、兼業が当該従業員の生計にとり不可欠となるほどの規模に達しているのか、休日を利用することにより本来の目的で与えている次の労働日への誠実な労務提供に支障が生じていないか、就業規則等により兼業・副業の禁止が周知されていたのかなどの実態はもちろん、企業側は、副業・兼業に対する考えが従業員に周知されるようにし、実際に副業・兼業を行っている従業員に対しては、兼業をやめるよう明確に注意し、黙認するような態度をとらないことが重要になってきます。 また、従業員が本業の競合他社において兼業を行う、自身で事業を行うといった行為をした場合、会社の利益を害するおそれが高いため、その他の兼業・副業に比して企業秩序に与える影響が大きいとして、懲戒解雇が認められる余地があります。更に、企業秩序に与える影響は、当該従業員の職責の重要性に応じて大きくなっていくため、職責の重い従業員には、より厳格な懲戒処分が許容されると考えられます。 以上から、従業員の兼業禁止違反に対する懲戒処分を検討する場合には、  ① 平日の労務提供に支障が生じるおそれや企業秩序に影響を与え得るものかどうか そもそも、そうした問題がなければ禁止される兼業に該当しません。  ② 会社として当該従業員の兼業を認識しているにも関わらず黙認していたような事実は存在しないか 会社として、禁止事項とする兼業に対し、特段の注意を行っていなかった場合は、懲戒解雇は無効とされる可能性が高いため、懲戒解雇処分は避けるべきでしょう。
  • 03-10 社内の不正行為が報道されました。社内調査の結果、従業員が社内通報窓口に申告せずに、不正行為がある旨の情報を報道機関にリークしていたことが判明しました。当該従業員を社内手続違反を理由として懲戒解雇できますか。
    内部告発者は、告発の状況により以下の保護制度の適用を受け得ることになります。 1. 労基法による保護・・・ 通報対象:当該法令に対する違反のみ               通報の相手方:監督官庁のみ 2. 判例法理による保護・・・通報対象:制限なし               通報の相手方:制限なし                  (ただし、告発手段・態様の相当性の限定あり) 3.公益通報者   保護法による保護・・・通報対象:通報対象事実のみ(2条3項)              通報の相手方:労務提供先、監督官庁、その他通報必要              者、(相手方によって保護の要件が異なる) 2の判例法理による保護の場合、① 告発内容の真実性(告発内容が真実か、真実と信じるに足る相当の理由があるか)、② 告発目的の公益性(告発の目的が不正の是正にあるか)、③ 告発手段・態様の相当性(告発の相手方の妥当性、情報の入手方法の妥当性等)等を総合的に考慮して、当該企業による懲戒解雇の妥当性を判断しています。 したがって、上記の①から③の要件をすべて欠くような態様の内部告発については、その正当性を認められず、懲戒解雇も有効とされるべきといえます。 他方、仮に③の告発手段・態様の相当性に問題があったとしても、①と②の要件が満たされている場合には、懲戒処分の対象にはなり得ますが、懲戒解雇まで行うことは難しいと考えられます。例えば、宮崎信用金庫事件判決では、顧客の信用情報等を記載された文書を不法に入手し、外部者にこれを交付した事案において、文書の不法入手(態様の相当性)や外部者への交付(告発手段)については、懲戒解雇事由に該当するが、実際に不正疑惑の解明につながったケースであり(告発内容の真実性)、不正を正すとの目的(告発目的の公益性)は、違法性を減殺させるため懲戒解雇は不相当であり無効であるとしています。 3の公益通報者保護法では、「公益通報」をしたことを理由とする公益通報者の保護を目的としていますので、行われる「公益通報」が、労働者による不正の目的がなく、労務提供先等について、「通報対象事実」が生じ、または生じようとする旨を「通報先」に通報する態様であることが必要です。 企業としては、従業員の拙速な外部への公益通報を防止して、企業に対するマイナスの評価・評判が広まることによる経営リスクを回避する観点から、内部告発制度を適切に構築し実効性のある運用を行うことがとても重要になってきます。(公益通報ハンドブック/消費者庁) もしも、社内運用に該当しない内部通報者が出た場合には、まず公益通報者保護法の保護を受けるかどうかを検討します。そして、保護の要件に該当するときには懲戒解雇はできません。保護の要件を満たさない場合も、次に判例法理の保護について検討が必要です。上述の通り、告発手段において処分の該当があっても、内容の真実性、目的の公益性が認められれば、懲戒解雇処分は難しいですので、軽度な懲戒処分のとどめるべきでしょう。
  • 03-11 懲戒解雇にした従業員の当該解雇の有効性が認められない可能性が出てきました。懲戒解雇後の普通解雇に主張を転換することはできますか。
    懲戒解雇後に当該懲戒解雇は普通解雇であったとして主張を転換することはできません。近年裁判事例の多くでは、懲戒解雇からの普通解雇への主張転換を許さないとしています。なぜなら、懲戒解雇は、企業秩序違反に対する制裁罰として普通解雇とは制度上区別されたものであり、実際上も普通解雇に比して特別の不利益を労働者に与えるものであるから、仮に普通解雇に相当する事由がある場合であっても、懲戒解雇の意思表示を普通解雇の意思表示に転換することは認められない。と考えているからです。(日本メタルゲゼルシャフト事件) では、懲戒解雇事由ではあるが、その有効性に不安がある場合にはどのような対応をすべきなのでしょうか。 以降のQA(03-13・14)でも述べていきますが、懲戒解雇事由があることを理由に普通解雇をすることは許されていますし、懲戒解雇を行う際に予備的に普通解雇を行うことも可能です。ですので、懲戒解雇ではその有効性に不安がある時には、懲戒解雇事由があることを理由に普通解雇とするか、予備的に普通解雇をすべきだといえるでしょう。 また、解雇後に懲戒解雇事由を争う係争中であっても、使用者は改めて当該従業員を普通解雇とすることができます。ただし、この普通解雇が認められた場合は、普通解雇の効力発生時までは、使用者と労働者との間の雇用関係は継続しているため、使用者は労働者に対してその間の賃金を支払うことになります。
  • 03-12 無断欠勤を繰り返したことを理由として従業員を懲戒解雇しましたが、解雇後に、当該従業員の提出した履歴書に虚偽の記載があることが判明しました。このことを懲戒解雇事由に追加して主張することはできますか。
    懲戒解雇後に、懲戒解雇の理由として主張した非違行為が該当しないとわかったときや、当該非違行為の性質や態様、その他の事情に照らして懲戒解雇の相当性が否定されるような場合があります。そうしたときに、事後的に判明した別の非違行為を懲戒解雇事由として追加主張できるのか、という問題があります。 判例では、「懲戒処分当時に使用者が認識していなかった労働者の非違行為は、特段の事情のない限り、当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠づけることはできない」(山口観光事件)として、「特段の事情のない限り」懲戒解雇事由の事後的主張を否定しています。 では、特段の事情とは、どんな場合をさすのでしょうか。 上記の裁判例では具体的な事情について解されることはありませんでしたが、その後の判決によって、「懲戒当時に使用者が認識していた非違行為については、それが、たとえ懲戒解雇の際に告知されなかったとしても、告知された非違行為と実質的に同一性を有し、あるいは同種若しくは同じ類型に属すると認められるもの又は密接な関連性を有するものである場合には、それをもって当該懲戒の有効性を根拠付けることができると解するのが相当である。」(富士見交通事件)として、追加主張された非違行為が、懲戒解雇事由とされた非違行為と密接な関連性を有する同種のものである場合には、その主張が許される特段の事情があると考えられるということです。 したがって、本問の場合、懲戒解雇時に、会社は履歴書の虚偽記載を懲戒解雇のりゆうとしていませんので、「特段の事情」がない限り、追加主張することはできません。 そして、「無断欠勤」と「履歴書の虚偽記載」とは密接な関連性を有する同種の非違行為であるとはいえず、特段の事情が認められませんので、会社は、履歴書の虚偽記載を追加主張することはできません。
  • 03-13 懲戒解雇事由があることを理由として普通解雇はできますか。
    懲戒解雇事由があることを理由として普通解雇をすることの可否について、判例では「一般に就業規則所定の懲戒理由が存する場合、形式上懲戒処分たる懲戒解雇に処することなく普通解雇に処することは、その実質が懲戒処分であったとしても、必ずしも許されないものではない。けだし、客観的に懲戒解雇を相当とする場合、これを普通解雇に処することは、特段の事由がない限り当該労働者にとって利益にこそなれ不利益をもたらすものではないからである。」(高知放送事件)として、懲戒解雇事由があったとしても、より不利益の小さい普通解雇に処することは当然に許されると考えられています。もし、就業規則の普通解雇事由に「懲戒解雇事由があるとき」等の文言がなかったとしても、上記の措置は可能だと解されます。 したがって、懲戒解雇事由があることを理由に普通解雇と処する場合、懲戒解雇の要件まで満たす必要はなく、普通解雇の要件を満たせば足りると考えられます。つまり、懲戒解雇事由は存在するが、解雇の相当性に不安要素がある場合には、当該懲戒事由があることを理由に、普通解雇要件を満たしていることがわかるように、「解雇通知書」において、明記することすることがポイントだといえます。
  • 03-14 懲戒解雇する従業員がいます。当該懲戒解雇の有効性が認められない場合に備えて、予備的に普通解雇を行うことはできますか。
    懲戒解雇は、労働者にもたらす不利益が大きいため、その有効性は普通解雇に比べて厳格に判断されます。しかし、03-11でも取り上げていますが、懲戒解雇を行った後に、その有効性が争われ、解雇無効となりそうだからと、その懲戒解雇には普通解雇の意思表示も包含されていたとして、普通解雇に主張転換することは許されません。 そこで、問いのように懲戒解雇の際に普通解雇を予備的にすることの可否が問題となります。 判例では、「懲戒解雇は、使用者による労働者の特定の企業秩序違反の行為に対する懲戒罰であり、普通解雇は、使用者が行う労働契約の解約権の行使であり、両者はそれぞれその社会的、法的意味を異にする意思表示であるから、懲戒解雇の意思表示がされたからといって、当然に普通解雇の意思表示がされたと認めることはできない。他方、使用者が、懲戒解雇の要件は満たさないとしても、当該労働者との雇用関係を解消したいとの意思を有しており、懲戒解雇に至る経過に照らして、使用者が懲戒解雇の意思表示に、予備的に普通解雇の意思表示をしたものと認定できる場合には、懲戒解雇の意思表示に予備的に普通解雇の意思表示が内包されていると認めることができるものと解される。」(岡田運送事件)とされており、懲戒解雇をする際に予備的に普通解雇をすることはできるとしています。 したがって、懲戒解雇をする際に予備的に普通解雇をしておけば、当該懲戒解雇が無効となったとしても、普通解雇としては有効である限り、雇用契約を終了させることができます。上述の通り、懲戒解雇から普通解雇への事後転換は出来ませんから、懲戒子を行う際に、少しでも解雇無効の可能性が考えられるならば、予備的に普通解雇をしておくべきです。 なお、労働基準監督署長の除外認定を受けて即時解雇を行うとともに、予備的に普通解雇を行う場合、解雇予告手当の支払いが必要かどうかという問題が生じます。この点、判例では、「使用者が即時解雇を固執する趣旨でない限り、通知後同条所定の三〇日の期間を経過するか、または通知の後に同条所定の予告手当の支払をしたときは、そのいずれかのときから解雇の効力を生ずるものと解すべき」(細谷服装事件)としていますので、使用者が即時解雇にこだわっていなければ、通知後30日の経過後に解雇の効力は生じることになります。また、従業員は、解雇までの30日間の賃金の支払いを求める可能性を有するに留まることになります。 この問いについては、懲戒解雇の際に予備的に普通解雇を行うことで、主位的主張である懲戒解雇が無効であっても、解雇予告手当を支払わない解雇通知日から30日の経過後に、予備的普通解雇の効力が生じ、雇用契約を終了させることができるといえます。ですので、「解雇通知書」では、懲戒解雇とともに予備的に普通解雇をすることを明確にしておくことがポイントです。
  • 04-01 病気で頻繁に欠勤を繰り返す従業員がいます。業務に支障が生じておりますので、会社の判断で休職させることは可能でしょうか。
    使用者には、労働者の業務遂行に伴い、その心身の健康を損なうことの無いよう注意しなければならい安全配慮義務を負っています。そこで、頻繁に病欠を繰り返すということであれば、使用者としての安全配慮義務を尽くす為にも、本人の病状を把握する必要があります。多くの場合、一定の欠勤が続いた場合、就業規則等で診断書の提出を求めているかと思いますので、その手続きに従います。そして、診断書の提出がなされれば、産業医等と連携しつつ、必要に応じ本人の同意を得たうえで主治医の見解を確認するなどして本人の病状を把握したうえで、必要と認められるときに休職命令の発令を含めた措置を行うことになります。 もし、就業規則に定める休職要件を満たしていない場合でも、勤怠不良、職場に対する悪影響、求める労務提供の水準への未達等、の普通解雇事由に相当するかどうかの検討を行い、措置を行うことも考えられます。また、例外的に普通解雇事由に該当していても特に必要と認められる人材であるといった理由がある場合には、復職の可能性を残した任意の措置でとして、個別の合意による休職を認めることも考えられるでしょう。こうした個別合意は、解雇を猶予する性質をもつといえますので、労働者にとっても不利益な合意とはいえず、むしろ有利な合意といえます。ただ、後日トラブルが生じないように、明確に休職期間を設定し、復職時の治癒の判断方法や必要と認められる場合には受診命令に従う、休職時の給与等の処遇についてはきちんと合意しておく必要があります。
  • 04-02 休職していた従業員が、休職期間満了の直前に、復職可能という主治医の診断書を提出してきました。まだ完全に回復していないように思えるのですが、本人が希望した場合には復職させなければなりませんか。
    復職の要件とされる治癒とは、原則として「従前の職務を通常に程度に行える健康状態」であることを指します。ですので、この基準に達していないと考えられる場合には、治癒したとは認められません。また、ある程度回復したとしても、軽作業しかできない場合には、雇用契約上の労務提供ができない状態にあることに変わりはありませんので、会社には復職させる義務はありません。 ただし、復職当初は簡易な職務でも、ほどなく従前の職務を通常通りに行えるという予測ができるのであれば、軽作業における復職にも配慮する義務が会社に生ずる場合があります。また、従前の業務に復帰できない場合でも、軽作業における復帰の申し出がある場合には、会社として配置可能である場合には、その検討は必要でしょう。 判例でも、「労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である。」(片山組事件)とされ、雇用契約上の職種の限定や業務内容の特定のない従業員の治癒の判断については、期待する労務の提供が従前の業務を基準とするものであっても、使用者側の企業規模や配置転換の可否、労働者自身の申し出等を総合考慮したうえで判断しなければならないとされています。 上記に対し、職種や業務内容を特定した雇用契約の場合には、その職種での業務遂行ができることが治癒の条件となります。 ただし、現実に当該職種以外の配置転換が可能であり、会社の経営上もその業務を担当させることにさほど問題がないときには、当該職種での復帰が出来ないことを理由に復職の拒否をすることは難しく、他の職種への転換、その職種での就労の可否等を検討し、当該従業員の治癒の程度を判断するべきといえます。 復職時の治癒の判断については、上述のとおり、提出された診断書・産業医や主治医の意見を参考に、当該従業員との話合いを重ね、従前の業務への復職が可能であるのか、従前通りの就労は無理でも、他の職種での労務提供は可能であり、当該従業員も申し出ている場合には、会社の規模や事情が許す限り、その復職を認める方向で手続きをする必要がありますが、結論、休職期間の満了時に復職できない状態にあると判断するのであれば、そこは就業規則の規定に従い、解雇または自動退職となります。 ですので、その治癒の判断は客観的かつ医学的に行われるべきであり、診断書の提出や産業医または会社指定医の診断(セカンドオピニオン)への協力を拒否する従業員に対しては、治癒の判断ができないものとして、休職期間満了における解雇・退職もやむを得ないといえます。
  • 04-03 主治医からの「復職可能」の診断書を受けて、復職をしてきた従業員に対し、すぐにフルタイムの勤務をさせることに不安があります。実際に業務に就かせて治癒の判断を検討していますが、どのような点に注意したらいいですか。
    休職開始から復職までの留意点等を厚労省がまとめた手引き「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」には、試し出勤やリハビリ出勤の制度を活用し、より安全な職場復帰への支援を会社が行うようにすすめています。 ただし、試し出勤やリハビリ勤務は基本的に復職前の休職期間中に行うものですので、その内容については、あらかじめ主治医・産業医等の意見を踏まえ、当該従業員に十分に説明しておく必要があるといえます。 どちらも復職の可否を判断する他の「治癒」の部分を確認することが目的ですので、その目的を逸脱するような長期間の試し出勤を行わせることがないようにしなければなりません。目安としては1か月以内であることが望ましいでしょう。 もちろん、治癒の判断が目的ですので、この試し出勤でも治癒したとの判断に至らず、休職期間満了を迎えた場合には、就業規則の規定に従い、解雇・自動退職の手続きを取ることになります。 会社が、主治医の診断書や会社指定の意見や面談等を通して、当該従業員の病状の治癒に関し適切に情報を収集した結果(04-02参照)、治癒が認められれば、従業員は復職することになりますが、すぐに従前と同様の業務を行うことは通常難しいと考えられますので、いわゆるリハビリ勤務等の制度を利用させることになります。 リハビリ勤務についての、法の規定はありませんので、就業規則、または従業員の同意を得て、その期間や内容、処遇等について具体的に定める必要があります。 このリハビリ勤務については、その期間を必ず定めておく必要があります。なぜなら、リハビリ勤務という特例の軽減措置をいつまでも当該従業員に認めてしまうことになるからです。そして、リハビリ勤務の終了後には、当然に従前の勤務に就いてもらうことが前提であり、仮に所定の勤務ができないとなれば、再度休職をさせるのか、就業規則の風痛解雇事由である「精神又は身体の障害、疾病等のため、業務の遂行に著しい支障があると認める場合」といった事情に該当するとして、普通解雇をするのかを検討する必要があります。
  • 04-04 以前よりうつ病を発症し、休職して復職をした従業員がいます。このたび再度うつ病で休職することになりました。今後もこうした休職と復職を繰り返す可能性があり、その対応に困っています。
    同一傷病での再度の休職等が就業規則で認められている場合には、再度の休職を認めるか否かを検討します。 ですが、あまりにも頻繁に休職する場合には、就業規則にある普通解雇事由その場合「精神又は身体の傷病により、業務の遂行に著しい支障が生じている場合」に該当しないかを検討する必要があるかと思います。 多くの就業規則では、休職期間の上限を定めていますので、際限なく従業員の休職を認める運用にはなっていないことから、当該従業員の休職の状況、期間等を考慮し再度の休職を認めるか否かの判断をすべきでしょう。 また、会社によっては、就業規則上、同一の傷病による再度の休職についての制限がなされず、休職後再度休職をする場合には、同一理由による場合も含め新たに休職期間がスタートする内容で規定されていることがあります。その場合、休職と復職を繰り返すことを認めざる負えなくなり、対応が困難になりがちです。そのため就業規則の整備をすることが検討されます。 復職後まもなく同一の理由により再度の休職がなされる場合には、復職時に傷病が完全に治癒していなかったことを示していますので、従業員が直前の休職と同一の理由で休職をする場合には、休職期間を新たにスタートさせるのではなく、前回の休職期間を今回の休職期間に通算する運用とするのが適切です。なお、ふたつの休職期間の間の期間を一定の期間(3ヶ月等)に定めることもポイントです。また、診断書に記載される病名について会社が同一であるかどうかを判断することは困難ですので、「類似の」傷病により休職をする場合も、休職期間を通算すると定めることも検討すべきでしょう。 もし、全く別の傷病による休職の場合は、特に通算の対象ではありませんので、原則通り、休職を認めることになります。ただし、当該従業員が個々は別の傷病であっても、何度も繰り返し休職をする場合には、前述の普通解雇事由への該当を検討すべきといえるでしょう。

​ 左のボックスが目次です。カテゴリー名をクリックするとQAの一覧が表示されます。なにかお探しのキーワードを右上の🔍検索窓に入力していただくと、近しいQAが検索されます。

bottom of page